✿Swag✿

個人的な思想の塊。

真夏の夜の独り言

この季節、色々が辛くなる。

 

まず第一に私が優先するのは各種メディアを避ける事だ。SNS上にいると、どうしても見たくない記事が目に飛び込む。

 

私がいちばん避けるべき季節、記事。

"戦争とヒロシマ" だ。

 

先に言っておくが、

"戦争賛成!反対とか意味解んないから気分悪い!"とかいう記事ではない。

 

今回の記事は珍しく愚痴になる。

書きたいことを書く。

 

戦争と広島について、色々なタイプの記事が回ってくる。

"もう二度とあんなことが起こりませんように"

"風化させてはいけない!忘れる事はよくない事だ"

"こんな状態になっても(云々:写真付)"

 

確かにそうだ。そうなんだよ。仰る通りだ。

 

でも有難いことに、はるか昔の事過ぎてそれを実際に経験なさった人生の大先輩方の多くはもうそれを聞かなくて良い場所へ旅立たれていると言う事。

 

これは私にとっては救いである。

人間には思い出さなくても良い記憶、という物もある。実際に常日頃から311を語る多くの人間は「地震で怖い思いをした」「現地の人達はもっと怖かっただろう」という思いからそれを語る。

当事者で語られているのを私はあまり目にした事がない。焼き付くレベルを超えると、それを言葉に変換する等、出来ないからだ。

 

善きばかりが良きではない、と思うのはこういう時。

 

その話に思いを馳せるなだとか、口にするなだとか、そういう事じゃない。大切な事だと思う。必要な事だ。

 

ただ、私はこの季節、それを見ると珍しく過呼吸が出たりする。

 

日本の教育で足りていないところも相成ってこういう現象が起こるのだろうが、確かに写真などの見た目は一瞬で言葉を奪うほどのインパクトがあり、その見た目に全てを持っていかれる可能性も高く。

 

"痛そうで、酷く、惨く、救いようのない

こんな状態に多くの人がなったのだから

もう二度と"

 

ではその状態になって、どうやって死ぬかを説明できる人が何人いるだろうか。

この場合は空爆による熱傷なので、当然、放射能汚染も関連してくるが、ここではそれは一先ずおやすみして

 

そのひどくて惨たらしい皮がずる向けになる程の熱傷になった場合、人はどの様にして死に至るか

 

こういう事を答えられない人が結構多い。

HIVにしても怖い怖いと言われるだけで、HIVだから死ぬ、HIVで死ぬ、と思っている方が多いのに似ている。

 

死に至る程の熱傷に陥った場合、この場合はレベルはⅢ度、皮膚は破れ、肉とは言わずなにかよく理解できない物が覗く。

目や唇や開閉する様な場所は閉じるのが難しくなる。

毛穴もないので汗はかかないが浸出液でズルズルで、雑菌が繁殖しやすいので何かしらの感染症に掛かりやすくなり、内臓まで火が回っている場合は多機能不全に陥る。

腎臓が動かなくなると大量に投与される輸液が行き場を失い、肺も動かなくなってくると内に溢れる水がどんどん溺れさせて呼吸を奪っていく。

白目は真っ黄色となり、身体中はヌラヌラで、絶命前には身体が3倍ほども膨張し、破損のひどい動く水死体を眺めている気分になる。

 

絶命した瞬間には、身体中の穴という穴から体内で行き場を失くした水分が溢れかえる。

 

口からも耳からも鼻からも目からも。

 

こんな事に付き合っている人間が考える事と言えば、よく理解できない目の前の惨劇の中で「これまでの事・これからの事」

 

"現在"等という単語は抜ける。

 

たとえば台所で玉ねぎを切っていたら指まで切ってしまって「どれ?見せて?あー痛そう…貸してみ」と絆創膏を貼ってくれたからこの体のどこのどの部分にどの様に絆創膏を貼れば元に戻るのだろう

 

だとか

 

これで助かったとしても死んだ方がマシだったっていう毎日が待っているだろう、それ位は馬鹿にもわかる

 

だけど死んでは欲しくない

でも死んだ方がきっと楽だ

 

現在が抜け落ちて、随分と時が経ってから、毎日あの現在という名前の透明ケースに押し込まれ、出られない事を知る。

 

記憶というのはそういう物だ。

それでは生きていけないから、と、まるで夢を見ていた様な滲んだ感覚の、輪郭のぼやけた日々を淡々と送る事になる。

 

"こんな状態になって!こんな事を繰り返しちゃいけない"

 

そう叫ぶ多くの人にとって、その惨劇はきっと机上の空論に過ぎず、見るのと聞くのでは大きな差だな……

 

と静かに私は画面を閉じる。

 

その時、街は、街全体がそうだったのだから、助かった人はとても長い時間を経てから

 

なぜ自分だけが生きているのだろう

 

と責めた事だろう。

生きているだけで大きな罪を背負わされている様な。

 

そしてそれは私も感じている事で、それを他人から見せられる度に

 

お前はどうして生きているのだ

 

という気になるのです。

 

無菌室ごしのぼやけた世界の向こう側や、心音モニターが落とした長い音が響く瞬間に世界が粉々に割れたような感覚がしたのに、変わらずに外は車が走り、鳥が飛び、山の木々が揺れ、それなのにとても、私だけとても、遠くにいるみたいに音が莎もり……

 

私はこの季節がとても苦手です。

それは世界の平和にとってとても大切な事であり、それでもやっぱり苦手です。

 

深夜の大きな独り言でした。